【メディア掲載】岐阜新聞 連載コラム『素描』 第6回『「予防的支援」が当たり前になることを願って』
岐阜新聞 連載コラム『素描』に、当法人代表理事 後藤千絵が8回にわたり寄稿しております。
第6回は、『「予防的支援」が当たり前になることを願って』です。
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病気になってから治療するのではなく、病気にかからないよう対策する「予防医療」という考え方があります。これはQOL(生活の質)の向上だけでなく、介護医療費の削減にもつながることが期待されています。
発達障害者の就労支援に携わっていますが、相談者の多くは「社会に必要とされていない」と自信を失い、うつや不安を患っています。彼らの多くは高校や大学に進学した「普通の人」ですが、就職につまずき社会から孤立し、ひきこもりなどになってやっと医療につながり、診断を受けるケースが多く見られます。生きることがつらいと訴える彼らの話を聞いていると、なぜもっと早く誰かが彼らの生きづらさに気づかなかったのかと思うようになりました。
発達障害とは生まれつきの脳機能の発達の偏りで、最近ではニューロダイバーシティ(脳の多様性)として捉えられるようにもなってきました。診断はなくても「自分はADHDだと思う」と多動な特性を自覚する人もいるほど、発達障害特性は広く認知されるようになりました。障害診断は特性の有無だけでなく、社会生活上の困難の有無によってつくものです。
発達障害特性があっても診断のない人をグレーゾーンと呼ぶこともあります。彼らが社会に出て孤立する前に特性に合った働き方や生き方を考える対策があれば、苦しみを軽減できるのではないか。おせっかいな心から「予防的支援」と位置付け、グレーゾーンの学生や若者支援を始めたのが2017年。増大する社会保障費やひきこもりの予防対策としても、この取り組みが社会に広がることを願っています。
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岐阜新聞Web(会員限定記事)→https://www.gifu-np.co.jp/articles/-/397437
■岐阜新聞2024年6月11日付掲載■
バックナンバー
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第2回 「念ずれば花ひらく」
第3回 「福祉が生み出す持続可能な小さなビジネス」
第4回 「忍者ねこと障害者のハッピーな関係」